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揺れる心の錬金術師 ◆7vhi1CrLM6 それを最初に見た――否、感じたとき、星のきらめきにとてもよく似ていると思ったことを、覚えている。 箱庭に散りばめられた53個のきらめき。 首輪に宿るアインスト細胞を通じて、アルフィミィはそれを知覚することが出来た。 視覚ではないところで見、聴覚ではないところで聞いている。 その感じ方は、NTや念動力者といった者達が他者を感じられるのと、似ているのかもしれない。 ただ、それは感覚という曖昧なもの。遠くのものを見て、その距離に当たりを付けるようなあやふやなもの。 不確実性は甚だしく、個人の趣向にも左右される。 見たいものだけを見、聞きたいことだけを聞く。見たくないもの、聞きたくないことは意識の外へ。 それがある程度可能なのだ。 だから別個に、アインスト細胞に依らない首輪そのものの機能の一つとして、ネビーイームには座標データが送られていた。 それを今、鎮座するデビルガンダムを通じてアルフィミィは確認している。 『問題』の反応はある。確かにその場所、その位置に反応はあり続けている。その問題ないはずの現象。 それがアルフィミィの焦りと混乱をより深くしていた。 「何故……感じられませんの」 どんなに意識を凝らしても見えない。聞こえない。これまで、こんなことはなかった。 箱庭というオモチャ箱に閉じ込めた53個のきらめき。その数は減り続けている。 死んで消えて去ったのだ。 それとは違う。死んでない。生きている。でも、知覚出来ない。感じられない。 まるで繋がらない電話だ。番号は知っているのに、間違ってないはずなのに。 出てくれない。 何度も、何度も、何度も掛けなおした。彼が居たはずの場所に目を凝らし、耳を凝らし、神経を集中させて感じようとした。 その度に、呼び出し音が虚しく響いただけだった。 「何で何も感じられませんのっ!!」 何も見えない。何も聞こえない。それが意味するもの。意味すること。 もしかして私は―― 頭をぶんぶんと左右に振って、その先の考えを振り払う。 もう一度。もう一度と自分に言い聞かせて、嫌な考えを頭から追い払う。 落ち着かぬ気持ちを無理にでも落ち着かせ、瞳を閉じる。箱庭に散らばるきらめきに意識を凝らす。 瞳は瞼の裏、何も映さない。漠々たる闇の意識野が拡がり、視覚ではない何かが光を捉える。 それはまるで夜空に浮かぶ星たちのきらめき。それは人の想い。 ときに強く、ときに弱く瞬き、怒れば赤に、悲しめば青にとその色を移ろわせていく、揺らめく炎のように。 それが画一的なアインストには無い色で、一つ一つ違った色で、最初は眺めているだけで楽しかった。 箱庭という宝石箱に、綺麗な色とりどりのビー玉を集めて喜んでいる子供のようなものだったのだろう。 だが、今はそんな余裕が無い。 焦りを抑えつつ、数え間違えのないようにそれを一つ一つ丁寧に確認していく。 確認できた数は19。そして、今現在生存しているはずの者の数は20。 ――ひとつ、足りませんの。 思い通りにならない現実に涙が滲んでくる。何もかも放り投げて泣き出しそうになる。 それを『がまん』の一言で押さえつけ、作業を続けた。 時計の針は、もうすぐ八時半を指す。対象を見失ってから約三十分。 何の進展も得られぬまま幾度となく繰り返した道筋を、もう一度辿る。 ユーゼス=ゴッツォとテンカワ=アキトのきらめきを確認。カミーユ=ビダンのきらめきも確認。 フェステニア=ミューズとオルバ=フロスト、確認。 ネビーイームから首輪の座標データを引き出し、照合。見つからない20個目のきらめき、それの存在を確認。 やはりそこにそれはあるのだ。なのに知覚できない。感じ取れない。 じわりと滲んだ涙をがまんして、口元がへの字に曲がった。まだ泣くには早い。 「 が ま ん ですの」 見えずとも、聞こえずともあるのだ。そこに間違いなくあるのだ。 なら感じ取れるはずだ。その存在を、自らの直属に位置する首輪のアインスト細胞を。 ユーゼス=ゴッツォとテンカワ=アキトの位置、カミーユ=ビダンの位置、フェステニア=ミューズとオルバ=フロストの位置。 それらを目印にすれば、意識野におけるキョウスケ=ナンブのおおよその位置は見当がつけられる。 睨みつけるかのようにして、感覚を研ぎ澄ます。そこに意識を凝らしていく。 広域に広げていた意識野を絞り込む。 中央廃墟、南部市街地の参加者を知覚の外へ。ロジャー=スミス、ソシエ=ハイムもそれに続く。 さらにレオナルド=メディチ=ブンドルと兜甲児も、今知覚外へ。 まだ見えない。さらに絞り込む。 ユーゼス=ゴッツォ、テンカワ=アキト、カミーユ=ビダンを知覚対象から外す。 最後に残ったフェステニア=ミューズ、オルバ=フロストの反応も意識野から追い出した。 そして残されたのは、狭く何もない漆黒の空間だけ。G-6基地だけに絞込み、意識を凝らしているにも関わらず――まだ知覚できない。 五感も不要。視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚を順に排除。 研ぎ澄ました知覚を腕の形に。それを伸ばし、どろりと粘性を帯びた暗い意識野の水面へと埋めていく。 掻き回し、掻き乱す。時折両の手で掬い上げ、何もないのを確認してもう一度。 何度も何度も繰り返す。 何かがあるはずだ。ここに。この場所に。 それに触れようと必死になって探り続けた指先に不意に何かが当たり、途端に弾かれた。 研ぎ澄ました知覚の腕が掻き消され、五感が戻る。凝らし、絞り込んだ意識野が拡散する。 気づくと、汗だくの体でデビルガンダムに半身を埋めていた。蒼ざめた肌に、途切れ途切れの呼吸。 見つけた。触れた。知覚した。でも―― 「何故ですの……なぜ? 何で? どうして!? 何がッ!!」 次第に激を増していく言葉。空気が足りず、上半身だけで大きく仰け反るようにして、息を継ぐ。 「……わかりませんの」 天を仰いで呟いた声は、ついに涙声へと変わる。 見つけたのは、キョウスケ=ナンブの首輪に宿るアインスト細胞の反応。だが触れた瞬間に拒絶された。 下位のアインストが上位のアインストを拒絶することなど、普通ありはしない。 ましてそれが直轄のものならばなおさらだ。にも関わらず拒絶された。理由ははっきりしている。 「……わかりませんの」 自分よりも上位のアインストがあの場に居る。同位ではなく上位の存在。 首輪のアインスト細胞が反応をよこさずに拒絶したのは、より上位の存在に支配権が移ったが為。 「何故、あなたが……わかりませんの」 主がキョウスケ=ナンブを器に選んだ。それがほぼ確定。 メディウス・ロクスが起こした空間の歪み、箱庭へと滑り込んだ主の一欠片、知覚出来なくなったキョウスケ=ナンブ。 そこへ思い至るだけの材料は十分にあった。 にも関わらず、今の今までその可能性を考えの外に追い出していたのは、否定したかったからだろうか。 かつて主の前に立ちふさがり、主が力の大半と引き換えに撃ち滅ぼした者達の一人と同質の存在。 しかし、それ以外は何の変哲もない何処にでもいる普通の人間。器に選ばれるような理由はないはずなのに。 別にいいではないかと思う。気にする必要も必然性もない。 理由が分からずとも、ともかく主は新たな器を手にしたのだ。それでいいではないか。 ――でも、どうして心が揺れますの? 胸中の呟きに答えはない。 息をゆっくりと吸い、長く細く吐き出す。答えの出ない疑問を棚上げに、思考を切り替える。 主の欠片が箱庭に降り、器に憑依した。 ならば今自分が考えなければならないのは、この先どうするべきか、だ。 最大限の融通を利かせ、主の有利なようにことを進めるべきか。あるいはこのまま静観を続けるべきなのか。 いや、そもそも主はこの宴の目的たる新たな器を手にしたのだ。もうこれ以上、この宴を続ける理由は何処にもない。 箱庭から主を脱出させ、残ったサンプルたちはそのままここに放棄しても一向に構わないのではないだろうか。 でもそれは―― 「……嫌ですの」 会ってみたい者達が、依然としてこの箱庭で生き続けている。 例え主にとってもはや用済みの空間と言えど、自身にとって魅力的な宝石箱である事実は変わらない。 それに、それにだ。そもそもあれは主と、ノイ=レジセイアと呼べる程のモノなのだろうか? 主の欠片であることに間違いはない。 だが、もしもあれがノイ=レジセイアと呼べる程の力を持っていなければ? 主の選択が間違っていたとしたら? ――別の器が必要ですの。 主の本体はまだこちらにある。再度憑依を促す必要が生じたときの為に、今この宴を止めるわけにはいかない。 自分が生み出された理由は、『ノイ=レジセイアと呼ばれるモノ』を生きながらえさせる為なのだから。 そう理由付けながらも、でも、と思う。でも多分本当は認めたくないだけなのだ。 あれがノイ=レジセイアだとは認めたくない。自分と同じく人をベースとしたあれがノイ=レジセイアだと認めたくない。 そして、主の器は自分によって選び出されるべきなのだ。そうでなければ、自分が生み出された意味がなくなってしまう。 だから認めたくない。自己の存在を懸けて、認めるわけにはいかない。 「あれは敵」 自分の存在価値を根こそぎ奪っていくもの。 「あれはまがいもの」 主の力によって生み出された主とはまた異なった別個の存在。 本当にそう思っていれば、動けたのだろう。主の本体に確認を取ったはずだ。でも違うと言い張りながら、その足は出ない。 怖いのだ。 問えば主はあれをノイ=レジセイアと認めてしまうだろう。そうなれば、自分の存在理由が消えてしまう。 生れ落ちた意味も、今生きている意味も失われるのだ。 それが何よりも怖い。 誰でもいい。誰でもいいから教えて欲しい。与えて欲しい。揺らぐことのない存在価値を、存在理由を。 主でなくても、今箱庭の中にいる者でも、誰でもいい。誰でもいいのに―― 「ここには……誰もいませんの」 直径40kmにも及ぶネビーイームの最奥、その中枢。見回せばそこはがらんと広い巨大な空洞でしかない。 「誰も……」 そのときアインスト=アルフィミィは、生まれて初めて孤独を理解した。 【アルフィミィ 搭乗機体:デビルガンダム(機動武闘伝Gガンダム) パイロット状況:良好 機体状況:良好 現在位置:ネビーイーム 第一行動方針:バトルロワイアルの進行 最終行動方針:バトルロワイアルの完遂】 【二日目 8 50】 BACK NEXT 仮面の奥で静かに嗤う 投下順 変わりゆくもの 争いをこえて 時系列順 最後まで掴みたいもの BACK NEXT すべて、撃ち貫くのみ アルフィミィ 怒れる瞳
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戦場を駆ける歌 ◆gw.2K3uEb6 ズドオォォォン。大きな破壊音とともにたちこめる砂埃、倒れる木々、そして二つの機体。 森の中で出会った二人のエースパイロット。 形は違えどともに平和の為と信じ戦い続けてきた歴戦の勇である。 それが正しかったかはわからないが、互いの信じる正義を貫くために闘い続けてきた。 そこには信念があった、守りたい何かがあった。 今、二人のその理由は薄く、揺らいでいた。 それでも・・・お互いに死ぬことはできなかった。 ──ゲーム開始直後 ザフト軍のエースパイロット、アスラン・ザラ。 与えられた機体はアナハイム・エレクトロニクス社で開発されたモビルスーツの凡庸性と モビルアーマーの高機動・高火力の両方を兼ね備えた拠点防衛用の機動兵器。 RX-78GP03S、コードネームにデンドロビウムの名を冠するガンダム試作3号機であった。 「ガン・・・ダム?連邦が新しく開発したものなのか? いや、しかしコンセプトが大分違うみたいだな。ミーティアとドッキングしたジャスティスよりもでかいな。 なるほど、操縦機構は理解した。 あとは実際に動かしてみて誤差を修正する・・・」 周囲に機体反応が無いことをレーダーで確認したのち、試射を行ったときだった。 何も無い空間から機体が突如姿を現した。 見覚えのある機体、かつて親友がその機体に乗り、そして死んでいった機体。 ブリッツガンダムだった。 ──同時刻 秘密結社OZに所属するエースパイロット、ライトニングカウントの二つ名を持つ男、ゼクス・マーキス。 与えられた機体はX207、電撃侵攻用モビルスーツ、ブリッツガンダム。 特殊兵装搭載可能なX200系フレームで製造されており、 一定時間機体を不可視にしてレーダーすらも無効化できるステルス機能、『ミラージュコロイド』を有している。 一通りの操作説明を理解したゼクスはレーダーに点滅表示された機体反応を見た。 即座にステルス化し、発見されるのを防いだ。 「ゲーム参加者かどうか見極める必要があるな・・・」 ゼクスはゲームに乗る気などなかった。 しかし襲ってくる相手ならば撃墜もやむをえないとも考えていた。 ゆっくり、気づかれないように徐々に近づく。 緊張感が次第に高まってくる。 汗がほほを伝って落ちたとき、ゼクスの目には自分に向けられた銃口が確かにうつっていた。 「クソ!!見つかったか・・・!問答無用で襲ってくるとは・・・いきなりゲームに乗ってるやつと出会うとはついてないな」 銃口から放たれるビームを咄嗟に避け、そして即座に反撃を行った。 「あの機体は・・・ニコル・・・!!ニコルの機体で・・・お前!!!」 続けて放たれるビームを避けつつ、奇襲を仕掛けようとしていたブリッツガンダムを敵だと認識するまで時間はかからなかった。 そしてこちらからも反撃を行う。 お互い咄嗟のことに頭が混乱しつつも、一つの考えがまとまっていく・・・目の前にいるのは「敵」である、と。 それが勘違いであるとは誰が分かるだろうか、誰が確認できようか。 お互いの銃口からでるビームでともに牽制しながらチャンスをうかがう。 激しいビームのやりとりを行いながら、一瞬のすきをついて ガンダム試作3号機から多数のマイクロミサイルが飛び交っていく、 ドオオォォォォォン。 大きな音とともに砂埃が視界を覆う。 「やったか・・・?」 そう思ったとき、思いもよらない方向、背後の死角からの攻撃が放たれた。 砂埃にまぎれ、ステルス化したブリッツにより奇襲。 放たれたビームは試作3号機を確実に捉えていた。 「く・・・避けられないか!?ならば・・・」 放たれたビームが試作3号機に当たるか否かという瞬間に、放たれたビームが突如何かに防がれた。 「く・・・なんだ?シールド・・・バリアーか!?」 「はぁはぁ・・・Iフィールド・・・助かった・・・。」 互いに距離をとり、一呼吸おいて再び交戦が開始されようとしたとき、 少し離れた位置から大きな声が響いた。 「おまえらあぁぁぁ!戦いなんてやめて、俺の歌を聞けえぇぇぇぇぇ!!!」 パイロットの歌に呼応するように”神の未知なる音”の名を冠する機械の神・ラーゼフォンから衝撃破が放たれた。 二人のエースパイロットの間を衝撃が駆け抜けて行く。 二機の機体の動きが止み、熱気バサラと呼応するラーゼフォンのデュエットが林を木霊していた。 【アスラン・ザラ 搭乗機体:ガンダム試作3号機(0083スターダストメモリー) パイロット状況:緊張 機体状況:軽微損傷、EN消耗 現在位置:B-6 第一行動方針:バサラ、ゼクスの様子を伺う 最終行動方針:未決定】 【ゼクス・マーキス 搭乗機体:ブリッツガンダム(ガンダムSEED) パイロット状況:緊張 機体状況:軽微損傷、EN消耗 現在位置:B-6 第一行動方針:バサラ、アスランの様子を伺う 最終行動方針:未決定】 【熱気バサラ 搭乗機体 ラーゼフォン:(ラーゼフォン) パイロット状況:好調 機体状況:損傷無し 現在位置:B-6 第一行動方針:二人の争いを自分の歌で止める 最終行動方針:主催者に歌を聴かせてゲームを止めさせる】 本編37話 始まりの葬送曲
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アーカイブ @wikiのwikiモードでは #archive_log() と入力することで、特定のウェブページを保存しておくことができます。 詳しくはこちらをご覧ください。 =>http //atwiki.jp/guide/25_171_ja.html たとえば、#archive_log()と入力すると以下のように表示されます。 保存したいURLとサイト名を入力して"アーカイブログ"をクリックしてみよう サイト名 URL
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フォルテギガス 機体名 フォルテギガス 全長 51m 主武装 ムーンサークル チャクラム状に変化させたフィガを敵に投擲する。 ストームブレード ビームサーベル状に変化させたフィガを両手に持って敵を幾度も斬り付けた後、相手を空高く斬り上げる。そしてフィガを柄の部分で連結、高速回転を行わせて敵を斬り付ける。ドラグナー1のレーザーソードを想像して貰えれば分かり易いかと思われる。 ビームハンマー フィガをガンダムハンマー状に変化させて、敵に叩き付ける。 ギガブラスター 腹部から発射する超大出力のビーム砲。発射時に発生する熱を逃がす為、ギガブラスター使用時にはフェイスオープンが行われる。 ライアットバスター ビームサーベル状に変化させたフィガを一つに結合。巨大な剣に変化させて、相手を一刀両断にする。 特殊装備 特殊自律機動型兵器『フィガ』 様々な形状に変化する特殊な武器。左右の手に一つずつ装備する事が可能。 シュンパティア 精神を共鳴させる特殊なシステム。ジョシュアとグラキエースはこのシステムによって、お互いの精神を一部共有している。お互いの考えている事や感情の波が伝わったり、人格に影響を与えたりといった効果が見られた。なお精神の共鳴は、シュンパティア搭載機に乗った人間同士、極めて相性の良い者同士に起こる模様。 分身 この巨体が分身する画を考えるとなかなかシュール。 ビームコート ビーム兵器のダメージを軽減する。 移動可能な地形 空:○ 陸:○ 水:△ 地:× 備考 名前の意味はラテン語で“強き巨人”。ストレーガとガナドゥールの合体形態。レース・アルカーナ二基を直結した事により理論上は無限の出力を持つ事になるが、機体が耐えられないので真の力は発揮出来ない。ただしグラキエースルートだとレース・アルカーナの片方はファービュラリスに移植される為、無限出力の設定は無し。また、ガナドゥールとストレーガへの分離機能もオミットされる。
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Stand by Me ◆YYVYMNVZTk 確実に切り裂くはずだった。 何も考えず、無心に、ただ刃を走らせて、その一撃は何よりも疾く、重く、強く。 けれど、確かに決意したはずなのに、あの声を聞いた途端に俺の心は揺れてしまった。 何故、どうしてと、疑問符が頭の上をくるくる回る。 「テニ、ア……」 ナデシコに近づいていく姿を遠めに見ていたときには気付かなかったが、テニアの乗る機体の損傷は、決して軽いものではなかった。 左腕は消失し、脇腹も痛々しく抉れている。それ以外にもはっと目に付く大きな傷から微細な傷まで全身無事なところがないほどだった。 テニアもまた、幾度となく戦ってきたんだろう。そして生き残ってきたんだ。 ……どうやって、生き残ってきたのか。ガウルンからは聞いている。 だけど、俺はまだテニアからは何も聞いていない。 そう、テニアから聞いた言葉は、まだ一つだけ。 あの言葉が真なのか偽なのか俺には判断できない。 だからもっと、テニアの声が聞きたいと思ってしまったのだ。 ただ今、この瞬間だけは、自分が殺し合いに巻き込まれていて、自分もまた殺し合いに乗るつもりで、最後の一人になろうとしていたことを忘れていた。 ただの高校生だった自分を担ぎ上げてロボットアニメの主人公に仕立て上げてしまった三人の、最後の生き残りである赤毛の少女を自らの手で殺そうとしていたことさえも忘れてしまった。 突然殺し合いの場に放り出されてしまって、磨り減った神経を更に張り詰めさせて、その末にようやく出会えた知り合いと思わず寄り添いたくなるのだってなんら不思議なことじゃないと思いたい。 そうなんだよ。 俺はもう、疲れてるんだ。 本当は、大きな声を上げて泣いてしまいたいんだ。 誰かの胸の中で、子供みたいに甘えたいんだよ。 今まで散々毒づいていたのは誰だって、笑うか? 笑われたっていい。簡単に心変わりしてしまってるってのは誰よりも俺が分かってる。 あの時テニアに対して抱いた殺意が本物じゃなかったわけじゃない。 ただそれ以上に、俺が思っていた以上に、俺の心は弱かったんだ、限界だったんだ、ただそれだけの話なんだ。 「統夜だよね? 統夜なんだよね!?」 ようやく二言目が聞けて、涙が一粒落ちそうになった。 でも、そんな顔をテニアには見せたくないと思ってしまったのはきっと男の子の意地というやつなんだろう。 少しだけ顔を伏せて、鼻頭がツンと熱くなる感覚をやり過ごしてから顔を上げ、今の自分が持つなけなしの余裕で表情だけでも取り繕って、声を返した。 「ああ、統夜だよ……テニア」 「良かった……会えて、本当に良かった……!」 モニターに映ったテニアの顔は、何処か懐かしかった。 赤毛と、くりくりとした瞳。おてんばだったテニアには似合わない、とても疲れた顔をしている。 最後に会ってから二日と経っていないはずなのに、数年も会ってなかった様な気さえしてしまう。 どうしようもなく、どうしようもなく、目の前にいる女の子はフェステニア=ミューズだった。 カティア=グリニャールでも、メルア=メルナ=メイナでもなく、フェステニア=ミューズだった。 ただ一人だけ生き残ってしまった女の子がそこにいた。 「どうしたの、統夜?」 「いや、ただ――」 少しだけ、思い出していたんだ。 テニアたちと出会ってから今までのことを。 「何で今更、そんな昔のこと?」 思い出さなきゃ、きっと俺は前に進めないから。 格好悪いだろ? 「ううん、そんなことない。アタシ信じてたからさ。統夜が助けに来てくれるって。 そして統夜は――来てくれた。アタシを助けに、来てくれた!」 そう言ってテニアは、俺に向かって笑ってくれたんだ。 そしてようやく俺は、思い出せた。 なんで、いきなりロボットに乗り込めだなんて言われて、そのまま戦い続けてたのか。 いや、戦うことが出来たのか。 最初は自分のためだった。死にたくないから成り行きに任せて戦い続けてたんだ。 でも何時の間にか、理由はそれだけじゃなくなっていた。 こいつらだったんだ。カティアと、テニアと、メルア――三人がいたから、三人のために、俺は戦おうと思い始めてたんだ。 それが、俺が偽者の主人公を続けられていた理由だったんだよ! くそっ……! くそっ!! 思い出したんだよ。忘れてたものを思い出したんだよ。 忘れたほうが絶対に楽だった。何も考えずに殺せるようになってれば、俺はきっと全てを捨ててでも、自分の命を守りにいけたんだ。 でももう駄目なんだ。 俺はテニアの声をもっと聞きたいと思ってしまってる。 テニアなら――俺に、主人公を続けさせてくれるんじゃないかって甘い希望を抱いてしまってる。 この場に及んで、俺は守りたいものを増やしてしまったんだ。 どんなに頑張ったって、一つしか残せないような、こんな場所でさ。 「テニア。お前が俺のこと信じてくれたんならさ――俺に、俺自身を信じさせること、出来るか?」 「いいよ。アタシは統夜のことを信じてるって言ったじゃん。 だから、統夜がアタシのことを信じてくれたなら――きっとそれは、アタシの中にある統夜のことを、統夜が信じることになる」 「俺はお前を信じたい。だからもっと聞きたいんだ。……俺が、俺でいられるように」 だから俺が俺を信じられるようになるまで、テニアを信じられるようになるまで――二人だけの時間が、欲しかった。 通信機のスイッチを入れる。チャンネルは既に合わせてある。告げるのは別離の言葉だ。 「……ガウルン」 『――ハ! お前が嬢ちゃんと向き合ってるってだけで、お前が何を言いたいのかくらい分かってるさ。 俺はお前のこと、なかなか見所のある奴だと思っていたが……とんだ見込み違いだったみたいだな?』 「幾ら罵ってくれても構わない。ただ俺は、あんたよりも信じたい相手が出来たんだ」 『あーあ、あれだけ忠告してやったのに――結局お前は、嬢ちゃんに丸め込まれちまったってわけかい』 「何と思ってくれてもいい。ただ――出来の悪かった弟子から師匠へ、最後に一つだけお願いさせてくれよ。 俺たちは二人だけになりたい。……今、笑っただろ?」 『そりゃあ笑うさ。ククク……この期に及んで色恋沙汰とは、若いねぇ?』 「茶化すなよ。あんたにとっちゃ笑い話でも、俺にしてみれば大事なことなんだ。頼む、少しだけでいい。俺たちが逃げ出せるまで時間を稼いでくれ」 『嫌だね。なんで俺がお前のためにそこまでしてやらなきゃいけないんだ? それで交渉のつもりなら、お粗末としか言いようがないな』 「……そうだよな。今更あんたに頼みごとなんて、俺がどうかしてたみたいだ」 『だがなぁ……元々、あの戦艦を狙うつもりだったんだよ、この俺は。お前に指図されたわけじゃないが――結果的には、同じことになるかもしれないな』 「はは、なんだあんた……案外、良い奴なのか?」 ブツンと通信は途切れた。 さんざ迷惑をかけられたが、終わってしまった今ならば、悪くなかったといえたのかもしれない。 いや、やっぱりそんなことはないか。 何はともあれ、これで準備は整ったはずだ。見ればナデシコから機体が一つ飛び出そうとしている。 これ以上、無駄な時間はなかった。 ブツンと通信は途切れた。 さんざ迷惑をかけられたが、終わってしまった今ならば、悪くなかったといえたのかもしれない。 いや、やっぱりそんなことはないか。 何はともあれ、これで準備は整ったはずだ。見ればナデシコから機体が一つ飛び出そうとしている。 これ以上、無駄な時間はなかった。 「テニア」 「うん」 たった五文字で通じてしまう。俺たちの距離は、こんなに近かったっけ? いや、今は余計なこと、考えなくてもいいんだ。 視界の隅に、黒が現れた。ガウルンの乗るガンダムだ。放たれた光弾が、ナデシコから飛び出そうとした機体の注意を引く。 その一瞬の隙をつき、俺たちは走り出した。 何処へ向かうかなんて考えてなかった。ただ、少しでも早く二人だけになりたかった。 ◇ 久しぶりに、統夜と会った気がする。 実際のところ、どのくらい会ってなかったんだろう。 うーん……一日くらいしか経ってないんだけどなぁ。 でもさ。 やっぱり統夜は、統夜だった。 アタシを助けてくれるヒーローだった。 そして二人で逃げ出した。 今ここは、どのあたりなのかな。 統夜に連れられて、とにかく逃げて――こんな感覚は久しぶりだった。 周りに誰もいないような、見渡す限りの草っぱらまで辿りついて、ようやく統夜は止まった。 そして――二人きりになったと、ようやく感じる。 うん。ようやく。 本当の意味で、私たちは二人きりになってしまった。 カティアも、メルアも、ついでにあのグ=ランドンも。 皆死んでしまったから、残ったのはアタシと統夜だけになった。 もし今、生き残っている人たちが皆生きて帰れるハッピーな展開があったとしても、アタシと統夜にとってそれはハッピーエンドなんかんじゃない。 統夜はカティアが死んだことを悲しんで、ずっと生きていかなくちゃいけないんだろう。 アタシはそんな統夜を見て、死ぬまで独りぼっちかもしれない。 たった一日で、アタシたちは変わってしまった。変わらざるを得なかったんだと思う。 変わらないと、耐えられなかった。 メルアが死んだことも――カティアを殺したことも――きっと昔のままのアタシだったら、耐えきれなかっただろうな。 昔、だなんて変だね。 でも、もうあの時間は――統夜と、アタシたち三人が仲良く過ごせていたあの頃は――もう、大昔のことだったんじゃないかと、そう思っちゃう。 「……テニア」 統夜は一体何を考えてるんだろう。 アタシには、今の統夜が分からなかった。 なんだか今の統夜は、アタシが知っている統夜じゃないけど、でも確かに統夜なんだっていう変な感覚。 この違和感が何から来るものなのか、アタシは知りたかった。 統夜のことをもっと知りたいから――なんて、おセンチな理由じゃないよ。 ただ単に、統夜がアタシを守る騎士として、ちゃんと頑張ってくれるのかどうか、それだけは知っておかなくちゃいけなかったから。 「俺、ちゃんとテニアと話したいんだ……聞きたいことも、たくさんあるんだ」 「いいよ。じゃあ……何から話す?」 「その前に、機体から降りないか? ちゃんと向かい合って話したいからさ」 そう言って統夜は、自分から先に降りて、草原に立った。 こんなことが出来るのは、きっとアタシのこと信用してくれてるからなんだろう。 もしここでアタシがベルゲルミルの足をちょっと動かせば、たちまち統夜は潰れて死ぬ。 そんなこと想像もしてないからこんなことが出来るんだと思う。 そしてアタシは……統夜がアタシを殺そうとするなんて思わなかったから、ベルゲルミルから降りた。 「ん。……統夜、何だか印象、変わったんじゃない?」 「そうかな? ……まぁ、色々あったから。そういうテニアも……いや、あんまり変わってないように見えるな」 力無く笑う統夜は、アタシが期待してた統夜じゃなかった。 なのにさ……ずるいよね。この統夜は、アタシが……いや、アタシたちが好きだった統夜にそっくりなんだよ? それじゃあさ、この統夜がどんなに頼りなくっても、期待しちゃうじゃん。 会ったらアタシが利用してやるー! なんて考えてたけど、アタシじゃなくて、統夜がなんとかしてくれるんじゃないかって思っちゃうよ。 だって統夜なんだもん。 統夜なら、アタシが出来っこないことでもやってくれるって、そんな気がするから。 ……アハハ、なんだか柄じゃないよね、こういうの。 「それで話したいことって何?」 「聞きたいことがある。テニアが今まで、どうやって生き延びてきたのか」 アタシは喋ったよ。 基本はナデシコで喋ったことと同じ。 メルアとカティアが殺されて、命からがらJアークから逃げ出してナデシコに転がり込んで、ようやく安心したと思ったら勘違いでナデシコ組に殺されそうになった。 そんなことを感情を込めながら、昔のアタシならこう話しただろうなって話し方で統夜に伝えた。 「だから……あの時統夜に助けてもらえて、本当に嬉しかった。またこうして統夜と話せるなんて夢なんじゃないかっておもっちゃうくらい」 「俺もだよ。俺も……ずっとテニアに会いたかった」 「え?」 「あ……いやいや、そんな意味じゃなくってさ……その、何て言うか」 顔を真っ赤にして照れる統夜が無性に可愛くて、久しぶりに声を上げて笑った。 あははははははと、大きな声で笑ったら、なんだか心がすっきりとした。 「あはは……そんな慌てなくてもいいのにさ。それで? それで統夜は今までどうしてたの? 統夜のことだから、またどこかで女の子でも助けてたりしたんじゃない?」 何の気なしに言った言葉だったのに、それで統夜は顔を曇らせてしまった。 ――何でだろ? 統夜に感じた違和感が何だったのか、アタシはよく考えてなかったのかもしれない。 「俺はさ……最後の一人になろうとしてたよ」 統夜の口からそんな言葉が出てくるなんて思いもしてなかった。 多分この時のアタシは、とても間抜けな顔をしてたと思う。 だってそうでしょ? 統夜が殺し合いに乗るだなんて……考えられない。 なのに統夜はまだまだ喋っていく。 「最初は生き残りたかっただけだったんだ。何度か戦って……でも、誰も殺すことはなかった。 でも、やってしまったんだ」 何を、とははっきり口にしなかった。 だけど何のことなのか、アタシには良く分かる。 段々と、血の気が引いていくのを感じていた。 「その後は半ば自棄だった。また戦って、戦って……その後だったよ。俺がガウルンと手を組んだのは」 完全に血の気が引いた。 アウト。どう考えてもこれはアウト過ぎる。 ガウルン――唯一、殺し合いへの意思をはっきりと見せた相手。 ガウルンからアタシがやったことをばらされてたら、完全にアウト。 「聞いたよ。テニアが何をやったのか」 はい死んだ! アタシ今死んだよ!? ……なのに統夜は、何故か優しげな笑みを浮かべていた。 「聞いた時は、テニアのことを凄く恨んだ。お前ら三人があの日、俺の前に来なかったら……きっと俺は、こんな殺し合いにも巻き込まれずにすんだんだろうって。 そう思ってたから、テニアがやったことを聞いて、なんて自分勝手な奴なんだって起こったんだよ。 でもやっぱり、実際にテニアと会ってしまったら……テニアの声をもっと聞きたいなんて思ってしまったんだ。 さっき、出会った頃のこと、思いだしてるって言ったのはさ、俺が自分から戦おうって思ったのは……お前らを守ろうって、そう思い始めたからなんだって思い出したんだよ。 こうやって話して分かったんだ。少なくとも俺は、テニアを殺すことが出来ない。 覚悟を決めたつもりだったのに、やっぱり大事な人は殺せない。――俺が言いたいのは、それだけだ。 テニアに、ガウルンから聞いたことは本当だったのか聞くつもりだったんだけどさ……やっぱりそれも、どうでも良くなってしまった」 ……それってさ、ずるいよ。 自分だけ言いたいこと全部言っちゃって……ずるいよ。 そんなこと言われたら……アタシだって、統夜のこと、思いだしちゃうじゃない! アタシの中で統夜は英雄だった。誰よりも強い存在だった。 カティアと結ばれたときだって、それが統夜の選択ならって、そうやって身を引いた。 ……それに、大事な人は殺せないって、だから統夜は優しいんだよ。 そんなことを言われちゃったら……アタシは、何も言い返せない! 本当は殺したくなかったなんて、そんな言い訳もできない。 アタシはカティアが目を覚ましたその時に、怖くなって力を込めて……殺したんだよ! カティアだけじゃないメルアだって目の前で殺されたのに、アタシは何も出来なかった。見殺しにしたんだ。 そんなアタシがさ、優しい統夜の隣にいられるわけないじゃん。 ただ優しいってだけなら、比瑪だっていたけど、でも、統夜と比瑪じゃ全然意味が違う。 だって……だってアタシも、こうやって話してて、統夜のことが殺せるだなんて思わないんだもの! ……あーあ、駄目だ。やっぱりアタシは――どうしようもなく統夜のことが好きなんだ。 好き。大好き。愛してる。いくら言葉があっても足りないくらいの気持ちがアタシの中にある。 メルアを見殺しにしたアタシでも、カティアを殺したアタシでも、武蔵を撃ったアタシでも、オルバを置き去りにしたアタシでもない。 ただの恋する少女なフェステニア=ミューズになってしまうんだ、統夜の前では。 「あのさ……」 口が勝手に動いていた。 アタシがやってきたことを、全部話してしまう。 どうせなら、カティアを殺したときに狂ってしまえば良かったんだ。 半ば理性を持って、狂ったつもりになって。そしてそのことを統夜に気付かされてしまって。 統夜は「それでもいい」だなんて優しい言葉を吐く。 だからずるい。そんなことを言われたら期待してしまう。 今度こそ、アタシが選ばれるんじゃないかって。 大粒の涙がぼろぼろとこぼれていく。 いつの間にか統夜も泣いていた。 子供みたいに、二人でわんわん泣いた。 「ねぇ、統夜……アタシもさ、統夜と一緒に生きたい。生き延びたい。もっと二人で色んなことしたい」 「俺も、まだまだやりたいことがあって、その隣に誰かにいて欲しい」 「いいの? アタシで。アタシは、最悪な女だよ。酷いんだよ」 「いいさ。俺だって最悪だよ。でも――テニアが欲しいんだ」 「ねぇ統夜、もっと強く抱きしめてよ。何もかも忘れちゃうくらいに、強く……」 初めて触れる統夜の胸の中で、アタシは多分、世界で一番幸せで可哀想な少女になった。 こんな巡り合わせを神様が決めてるんだとしたら、きっとその神様は残酷だ。 なんでこんなところで、って思う。アタシがあんなことをした後にこんな幸せを与えるなんて。 でもアタシは神様に言いたい。ありがとうって。 もう一度言うよ。アタシは今、幸せ。 【紫雲統夜 登場機体 ヴァイサーガ(スーパーロボット大戦A) パイロット状態:昂揚 機体状態 左腕使用不可、シールド破棄、頭部角の一部破損、全身に損傷多数 EN80% 現在位置:H-1 第一行動方針:??? 最終行動方針:テニアと生き残る】 【フェステニア・ミューズ 搭乗機体:ベルゲルミル(ウルズ機)(バンプレストオリジナル) パイロット状況:幸福 機体状況:左腕喪失、左脇腹に浅い抉れ(修復中) 、シックス・スレイヴ損失(修復中、2,3個は直ってるかも) EN60%、EN回復中、マニピュレーターに血が微かについている 現在位置:H-1 第一行動方針:??? 最終行動方針:統夜と生き残る 備考1:首輪を所持しています】 【二日目14 30】 BACK NEXT 心の天秤 投下順 驕りと、憎しみと 驕りと、憎しみと 時系列順 かくして漢は叫び、咆哮す BACK NEXT Lonely Soldier Boys &girls テニア 王の下に駒は集まる Lonely Soldier Boys &girls 統夜 王の下に駒は集まる
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闇色をした『王子』さま ◆caxMcNfNrg 「あ、あの……すいません。 あなたは、このゲームに乗っている人……なんですか……?」 愛する女性の放った、その疑問に・・・テンカワ・アキトは暫しの逡巡の後、 「いや・・・」 と、短く答えた。 「よかった・・・ゲームに乗ってる人だったら、どうしようかと思いました・・・」 アキトの答えに、ユリカが安堵の声を漏らす。 どうやら、こちらが誰であるかに気づいていないらしい・・・ (当然か・・・今の俺は、彼女の知るテンカワ・アキト・・・ あの頃の俺とは、まったく雰囲気が異なっているからな・・・) その上、頭部がパイロットメットに覆われているのだ。仕方がない。 「・・・それでですね。 よかったら私と一緒に、このゲームから脱出する方法を探しませんか? 仲間が大勢集めて、あの化物を倒しちゃいましょう!」 アキトがそんな事を考えている間にも、通信機からの声は途絶えることなく続く。 「それに、私の仲間や貴方の知り合いだって、私達の事を探しているはずです。 ですから、ここで諦めないで、皆で力を合わせれば・・・」 「仲間、か」 オウム返しに呟いたその言葉に、ユリカは大きく頷いた。 「はい!私の仲間・・・私、ナデシコっていう艦の艦長なんですけど・・・ その艦に乗っているクルーの皆・・・ルリちゃんに、メグミちゃんに・・・」 元々の話から脱線し、ナデシコのクルーの名前をあげていくユリカ。 しかし、アキトはそれらの名前・・・そして何より、彼女の喋る言葉、 一つ一つに懐かしさと胸に溢れる何かを感じていた。 「それから、アキトが・・・私の大切な人が、きっと私の事を探してくれているはずです!」 「・・・・・・そうか・・・・・・」 「それに、貴方の大切な人たちも、貴方の事を探してるはずです。 だから・・・私と一緒に頑張って、ここから脱出する方法を探しましょう?」 彼女の言葉に・・・アキトはしばし、目を瞑る・・・そして・・・ 「いいだろう・・・」 「それじゃあ・・・」 歓喜の声をあげる最愛の女性を、通信機越しに見つめながら・・・黒衣の王子は言った。 「・・・君が大切な人の元へ帰るまで、俺が君の事を守り抜こう」 その言葉に驚きの表情を浮かべるユリカ。 「・・・アキト・・・?」 彼女の漏らした呟き――疑問は、誰に聞かれるでもなく、艦橋に消えた。 「・・・ところで貴方のお名前は?あ、私はミスマル・ユリカです!」 「俺は・・・・・・・・・ガイだ」 「・・・そ、そうですか・・・あの、良かったら着艦しませんか?」 「いや・・・・・・見回りもかねて、この艦の周辺空域で待機する」 【テンカワ・アキト 搭乗機体:YF-21(マクロスプラス) パイロット状況:良好 機体状況:良好 現在位置:D-7 第1行動方針:ユリカを守る(そのためなら、自分が犠牲になっても構わない) 最終行動方針:ユリカを元の世界に帰す(そのためなら、どんな犠牲も厭わない)】 【ミスマル・ユリカ 搭乗機体:無敵戦艦ダイ(ゲッターロボ!) パイロット状況:良好 機体状況:良好 現在位置:D-7 第1行動方針:仲間を集める 最終行動方針:ゲームから脱出 ※1、YF-21に乗っているのがアキトだとは知りませんが、もしかしたらとは思っています ※2、アキトの名前はガイだと思っていますが、若干の疑問もあります】 【初日 13 20】 BACK NEXT 歌と現実 投下順 The two negotiators 歌と現実 時系列順 The two negotiators BACK 登場キャラ NEXT 恋と呪い アキト 美しくない 恋と呪い ユリカ 美しくない
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アルトアイゼン 機体名 アルトアイゼン 全長 22.2m 主武装 三連マシンキャノン 左腕についてるマシンキャノン。威力に期待せず牽制的な意味合いで使うべし リボルビング・ステーク アルトアイゼン最大の特徴である杭打ち機、完全にマリオン博士の趣味かと思われる。リボルバーの銃口にナイフのようなものが付いており、敵にそれを打ち込み、弾丸を発射、その衝撃で相手を打ち抜く武装。近接にもほどがある近接武装、とびっきりデンジャラスです。重要なのは踏み込みの速度、貫け、奴より速く ヒートホーン 頭部についている角。角に高熱を発生させ相手を刺すなり斬るなりする武装。伊達や酔狂でこんな頭をしてる訳じゃない スクエア・クレイモア 両肩に付いたミサイルランチャーのようなものからチタン製クレイモア弾を発射する。遠くに飛ばないため至近距離での発射が前提、また近づく敵への弾幕としても使えそう。大量の敵に対抗できる唯一の武装。一発一発が特注のチタン弾だ・・・! 切り札 アルトの武装というよりはキョウスケの技に近い武装。三連マシンキャノンで牽制した後、近づきヒートホーンで切った後ステークの有り弾全部打ち込む技。打った後はリボルバーの薬莢を全部抜き「この技を切り札にしたのも私だ・・・」とでも言っておこう 特殊装備 ビームコート ビームコート。あと強いてあげるなら装甲が厚い。 移動可能な地形 空中×、陸地○、水中○、地中× 備考 ゲシュペンストT(テスト)タイプをベースに作られたATX計画の一環として造られた機体、ドイツ語で「古い鉄」元はマリオン・ラドム博士がゲシュペンストMk-2の正式後継機として開発したのだが、操縦のピーキーさと夫への対抗心のためEOT(人類外の技術)を一切使わなかったこと、趣味に走りすぎたなどの原因で量産計画は切られ、古い鉄という不名誉な名を貰った機体。だが平行世界の一つでは正式量産されており、その隊長が使う機体は青色である。しかしその性能の高さはかなりのもので、キョウスケ・ナンブ中尉がこれを駆り、数々の戦果をもたらしている。機体コンセプトは「絶対的な火力と強固な装甲による正面突破」ガンダムの「一機にて戦況を揺るがすMS」という一機でどうにかなるという考えが似ている。分の悪い賭けが大好きなキョウスケ自身も当初は「馬鹿げた機体」と評している。当時の彼はその馬鹿げた機体を更に馬鹿げた機体にするとは一寸も思わなかっただろう。ブーストの緩急の激しさ、操縦性の悪さ、遠距離武装一切無しと、これで量産競争に勝てというほうが無理な相談であるのは内緒だ。マリオンさん、もう少しパイロットや他の人のこと考えようよ・・・なお、このイチバチな機体の思想はビルトビルガーに受け継がれた。とは言ってもカーク・ハミル博士が主な設計を担当したので、イチバチなのはマリオン博士が関与した武装面である。
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◆ 「……嫌だ…嫌だ」 立ち並ぶ廃墟をなぎ倒し、抉れた大地が一筋の巨大な爪痕になっていた。 その爪の先で地に伏すヒメ・ブレン。その中でアイビスはうわ言を繰り返し呟いている。 うつむき、小さく丸まり、膝を抱え、体は芯から奮え、瞳孔は開き、焦点の合わぬ瞳は揺れ、歯の根も噛み合わず、心も折れた。 怯えが、慄きが、恐怖が全身を支配している。 「アイビス、無事か?」 ――通信? 僅かに顔を上げ、コックピットの内壁にぼんやりと開かれた通信ウインドウに目を向ける。 端整な顔立ちの青年がそこにはいた。 「ク……ルツ?」 「動けるな? やり返すぞ」 「無理だよ!」 息巻くクルツの声に咄嗟に反対の言葉が出る。本心だった。 自身の無力を思い知らされ心砕けた少女を目の前にして、驚きの表情をクルツが浮かべる。 「何……言ってんだ?」 「……無理だよ。ジョシュアの敵討ちなんて……私には無理だったんだ。 あんな奴に……勝てるわけがない。ねぇ、逃げよう。逃げようよ。ここから逃げちゃおう」 「お前、本気で言っているのか?」 「本気……だよ。だって仕方ないよ。勝てないんだ! 怖いんだ!! どうしようもないんだからっ!!!」 ギンガナムを思い浮かべると何をするのよりも恐怖が先に立つ。涙がこぼれ、体が震えてどうしようもなかった。 「そうか……悪かった。悪かったよ。すっかり忘れてた。誰も彼もが戦闘に慣れてるわけじゃねぇんだよな。 どいつもこいつも機動兵器の扱いに長けてやがるから、ついあいつらといる気になっちまってた。……俺は残るぜ」 「無茶だよ。あんたもうほとんど弾ないんでしょ……殺されちゃうよ」 「あぁ、その通りだ。だからアイビス、俺は無理強いはしないぜ。でもよ。ここで逃げちまってもいいのか? そりゃ俺だって死ぬのは怖いさ。逃げ出したくなることもある。だけどよ……命を懸けても絶対に譲れないことって……あると思うんだ。 これさえやり遂げれば一生胸張って生きていけられる。そういうときってあるだろう? だから俺は諦めない。だから俺は戦う」 思わず見上げた瞳に真っ直ぐな目をしたクルツの顔が飛び込んできた。その顔が一度にっと笑い、すぐに真面目な表情を作る。 「柄にもねぇことを言っちまったな。まぁいい。後は俺一人でやってみる。助けに入ってくれたラキは見捨てられねぇ。例え勝てなくても一泡吹かせてやるさ。 お前は逃げろ。逃げてそのアムロとか言う奴に悪かったって代わりに謝っといてくれ。じゃあな。お互い生きてたらまた会おう!!」 「あっ! ま……」 返事を返すよりも早く通信は途切れた。ノイズを伝えるのみになった通信機を前に呆けたように立ち尽くす。膝を抱え、丸く蹲り呟く。 「ずるい……」 心の中では逃げ出したい思いと踏みとどまりたい思いが葛藤を続けていた。 こんな自分でもまだ何かやれることがあると思う一方で、行ったってどうせ何も出来やしないといった思いがある。 「ラキが……ラキがいるんだよね」 胸を張って生きていけるのかは分からない。でも、今逃げ出したら一生悔いて生きていくのだろうという予感はあった。 少なくともここで逃げてしまえば二度とジョシュアに顔向けは出来ないだろう。シャアにもだ。 (でも……でも……ブレン、私はどうしたらいい?) お前は行かないのか、と耳元がざわめく。引け目を、負い目を感じながら生きていくのなんて真っ平ごめんだ、と何かが囁く。 それでも足は前に出ない。どうしようもなく怖いのだ。もう一度ギンガナムとの交戦を考えただけで膝が笑い、腰が砕け、足が退ける。 行きたい思いと逃げたい思いが交錯し、アイビスはその場から動くことは出来なかった。 ◆ 蒼と白の巨人が踊っている。 突き出した斬撃が防ぎ、捌かれ、かわされる。 迫る拳を受け止め、受け流し、やり過ごす。 目まぐるしく入れ替わる攻防は一つの流れとなり、流れは次の流れへと滑らかに変化していく。 そんな攻防の中、奇妙な心地よさが全身を包んでいた。 ブレンバーをなんでもなくかわしたシャイニングガンダムの双眸が閃く。 さあ、来い。 お前の番だ。 重心の動きが見える。 体重が左足に移り、右足が僅かに浮く。 その動作をフェイントに、突然撃ち出される頭部のバルカン。 それをすり抜ける様にかわす。 音が消え。 色が消え。 五感が遠くなる。 やがて体も消えた。 何もない空間に残された意識だけが。 飛び。 交わり。 火花を散らす。 エッジを立てる。 刃先が一瞬輝く。 踏み込み、剣を振るう。 手ごたえはない。 そのことに心が湧き踊る。 馳せ違い、反転。 正対し、トリガーを引く。 極小距離からの射撃。 かわせ。 生きていろ。 もう一度、刃を交えよう。 飛び退く。 距離を取る。 体中の体重を足に乗せ。 もう一度、踏み込む。 相手も重心を足に。 そして、バネの様に前へ。 いいぞ、速い。 さあ、もう一度。 交錯する意識と意識。 剣と拳が擦れ違う。 掠ったか。 凄い。 いい動きだ。 楽しい。 しかし、何だ? 少し遅れた。 何故だ? 遅い。 重い。 どうした? どういうことだ? この不自由さは。 このズレは。 それに、声が。 ――ラキ。 男の声が。 ――ラキ。 聞きなれた声が間近に。 ――ラキ、そっちじゃない。 誰……ジョシュア? 不意に長く暗いトンネルを抜けたかのような色鮮やかな景色が周囲を埋め尽くした。 それに気を取られる間もなく、眼前に迫った豪腕の対応に追われて、咄嗟に身をよじる。 装甲の表面で火花が散ったかと思ったときにはもう蹴飛ばされて、1km先の地面を転がっていた。 何という素早さだ。 こんな相手と今まで五分に渡り合っていたというのが信じられなかった。 口の中を切ったのか血の味に気づき、五感が体に戻ってきたということを自覚する。 戻ってこられたのはあの空間に介在していた二つの意思のおかげ。 胸をギュッと掴む。消えたと思っていたジョシュアの心ともう一つ。 ただの機械ではなく生きている機械、感じたズレの正体――ネリー・ブレンの意思。 (ブレン、ありがとう) (……) 視線の先では、急に不調を起こしたこちらをいぶかしみ、待っている相手の姿があった。 その姿は語っている。『もっと戦おう』『もっと殺しあおう』と。 「ん?」 (……) 「大丈夫。もうそっちには引き込まれない」 ――そう。ジョシュアの心の頑張りを決して無駄にはしない。 ◆ 未だ暗い大地に重い足跡を残し、脚部に損傷を抱えたままのラーズアングリフは移動を続けていた。スナイパーであるクルツの頭に、ラキとギンガナムの接近戦に割り込むという選択肢はない。 移動の足を止めずに周囲に目まぐるしく視線を走らせ彼が探すのは、周囲でもっとも見晴らしがいいと思われるポイント。 コンクリートに覆われ、ビルに埋め立てられた市街地と言えど、元の地形を考えれば若干の高低差は存在する。その僅かに小高い丘一つ一つに厳しいチェックの目を向ける。 しかし、廃墟と化しているとはいえ、立ち並ぶビルは高く数も多い。高いところに高いものを建てるというのは、都市景観の一つの考え方なのだ。 絶好の狙撃ポイントといえる場所など見つかりはしない。それでも幾分マシな丘を見つけ、目を付けた。 周囲に気を配り、極めて慎重に、静かに、そして素早くビルの谷間を突き抜ける。坂を登りきったクルツの視界が開け、ラキとギンガナムが切り結ぶ戦場が映し出された。 「ここなら、いけるか……?」 戦場の全てを見渡せるという状態には程遠い。だがそれでもやるしかない。 地に伏せ、短銃に輪切りのレンコンを思わせる回転砲頭をつけたようななりのリニアミサイルランチャーを構える。 掌中の弾は僅かに二発。だがそれでいいとクルツは一人ごちた。 狙撃の前提条件は相手方に悟られないこと。その観点から見るとこの機体は少々派手過ぎる。一度発砲すればまず間違いなく見つかるだろう。 つまり二度目はなく、多くの弾はこの場合必要ない。問題はそれよりも狙撃にはおよそ向かないと思われる火器のほうにある。 近中距離用の小型ミサイル。噴射剤の航続距離には不安が残り、レーダー類が軒並み不調な以上、誘導装置もどこまで信頼できるかわからない。精度に問題が出てくる可能性が高いのだ。 「どうしたもんかねぇ、こりゃぁ……。でも、まぁ、大見得切っちまった以上やるしかねぇか」 頼れるのは最大望遠にした光学センサーと両の目のみ。 なんだかんだ言ってもやることに変わりはない。出来るだけ正確に目標を狙い撃つ。ただそれのみ。 機体を地面に伏せさせると、目を細め、小指の先ほどにしか見えない飛び交う二機の挙動を穴が開くほど見つめた。瞬きはしない。ただじっと動きを止めて来るべきときを待つ。 睨んだ視線の向うで七色に輝くチャクラ光と蒼白いブースターが、蛍のように大きく、小さく尾を引きながら明滅する。 突然、不調が起こったのかネリー・ブレンの動きが鈍る姿が見えた。そして見る間に押し切られ蹴り飛ばされる。 距離にして約1km。両者の間が開く。それを視認した瞬間には既にトリガーを引いていた。 煙の帯を引いたミサイルが銃身から飛び出していく。そして、カサカサに乾いた唇に舌を這わせ、もう一発。 弾装はこれでもぬけの空。だが、とりあえずの人事は尽くした。後は運を天に任せるのみ。 常識に従い速やかに射撃地点から離脱を始めたクルツの耳に、爆発の轟音が届いた。だが、噴射炎越しに直前で身を翻すのが見えた。案の定、爆煙の右上を裂いて敵機が現れる。 その様にクルツはにやりと笑った。 「予想通りだ! 往生しやがれ!!」 グッと親指を立てて突き出した右手を下へ返す。二発目はギンガナムに向かって猛進している。 気づいた敵機が姿勢制御用のスラスターを噴かし、慌てて左へ大きく流れた機体の勢いを殺す。 無駄だ、とクルツは一人毒気づく。場は空中、足場のないそこでは勢いは殺しきれない。ジャマーか、あるいはSF染みたバリア装置でも持っていない限り直撃は避けられない。 それがクルツの下した結論だったが、直ぐにそれは破られ驚くこととなった。 ギンガナムがブンッと音を立ててピンクの光刃を腰から引き抜く。そして、一切の躊躇もなしにミサイルに投げつけたのだ。 結果、直撃前にミサイルが爆発し、呆気に取られて動きを止めたクルツはギンガナムと視線がかち合うこととなる。 「やべっ!!」 息をつく間もなくギンガナムが反撃に転じた。左腕から無数の光軸が殺到する。一制射につき二筋の光軸。 「くそっ! 良い腕してやがる!!」 三制射かわしたところで体勢を崩し、四制射目がラーズアングリフの右膝間接を砕く。そして五制射目、コックピットへの直撃を覚悟した。 その直撃の刹那、異音と共に何かが視界に割り込む。眼前で七色に輝く障壁とピンクの光軸が火花を散らし、残響を残して消えていった。 両の手を大きく広げて身を挺して庇うように立ちふさがる機体を見上げ、クルツは抑えきれない笑いを噛み殺す。 「ようやくおいでなさって下さったわけだ」 見知った顔が一つ、モニターに映し出されている。赤毛に黒のメッシュの少女、アイビス=ダグラスだ。 「待たせてごめん。ここからは私も戦う」 「悪いな。こっちは弾切れ。ここらでギブアップだ。で、大丈夫か?」 おちゃらけた態度で両手を挙げてお手上げをアピール。そこから一転して真面目な顔つきに変わったクルツが言う。 それにアイビスはモニターに向かって右手を掲げて見せつつ、答えを返してきた。 「大丈夫じゃないよ。怖いし……ほら、手だってまだ震えてる。でも、ブレンがあの蒼いブレンを助けたがってるんだ。それに――」 「それに?」 「あたしもここで逃げたらジョシュアに顔向けが出来ない。 あんたが言うように胸を張って生きていくことが出来なくなる」 目を見、おっかなびっくりではあれど吹っ切れたようだな、と推察したクルツはクッと笑い、言葉を返す。 少なくとも、ただのやけっぱちでぶつかって行こうという心構えではないらしい。 「ない胸して、言うねぇ! 上等だ!!」 「一言余計だ!!」 「ハハ……怒るなよ。褒めてるんだぜ、これでも。 アイビス、モニターをこっちに回せ。俺がサポートをしてやる。思いっきり暴れてこい!」 「モニターを?」 「ああ! 敵機の行動予測と弾道計算、その他もろもろ全部任せろ」 「ナビゲーションの経験は?」 「ないっ!」 「えぇ~、無茶だって!!」 砕けた口調で返してきた言葉に、固さは取れたな、とにっと笑う。 軽口というのは、固くなって縮こまっている新米兵士に普段の自分を取り戻させてやるのに有効なのだ。それで随分と生存率が変わってくる。 「そいつは実際にやってみてから言う言葉だな。やってみもしねぇうちからする言葉じゃねぇ。少なくともないよりマシだろ? それに怪しければ無視してくれて構わねぇ」 「そりゃ……まぁ……」 「なら決まりだ! 俺とお前、二人で……いや、ラキも合わせて三人で奴に一泡吹かせてやろうぜっ!!」 「わかった。やるよ、ブレン!!」 威勢良く啖呵を切ったクルツに、一度目を丸くしたアイビスが目つきを変え、顔つきを変え、答える。 その姿を見たクルツは、いじけにいじけて一周したら良い顔になったじゃないか、と一人ごちた。 ◆ 突然の爆発にラキの挙動は遅れ、一時的にギンガナムを見失っていた。 爆発の余波か、電磁波が入り乱れてレーダーの効きがとんでもなく悪い。視界も立ち込めた薄煙でフィルターをかけられていた。 そして、二度目の爆発が起こる。 耳を劈く轟音と眩い閃光。遅れてやってきた空気の壁が薄煙を吹き飛ばす。 咄嗟に目を向けたその先に、左腕から投げナイフを投げるように光軸を飛ばすギンガナムの姿があった。視線誘導に引っかかったように、光軸が殺到する先に自然と目が向く。 「あれは……ブレンパワード? ……っ!!」 クルツのラーズアングリフと白桃色のブレンパワードをラキが視界に納めるのと、ギンガナムが大地を踏み鳴らし進撃を開始したのは、ほぼ同時だった。 咄嗟に視線を戻す。またしても出遅れた。 猛然と突撃を試みるギンガナムに対し、初動の遅れたラキは間に割ってはいることが出来ない。間に合わない。 が、それはあくまでラキに関してだけのことである。 ラキよりも素早く反応を起こしたネリー・ブレンが跳ぶ。バイタルグローブの流れは一切合財の距離をふいにして、ネリー・ブレンをギンガナムの真正面へと誘う。 ジャッという鋭い反響音。 咄嗟に掲げられたアームプロテクターと唐竹割りに振り下ろされた刀剣の間で、火花が奔る。 「ブレン、弾け! 押し合うな!!」 『緊』と乾いた音を残して、ブレンが飛び退いた。 格闘戦の為に造られたシャイニングガンダムとブレンパワードでは、人で言うところの腕力・筋力がまるで違っている。 だからこそ押し合わずに弾く。単純な力比べでは敵うはずもない。 ならどうすればいい? こんなときにジョシュアならどう戦う? 思案を巡らせる。巡らせるうちに再び身の内で疼き始めたモノを感じ取り、思わず手に力を込めた。両の手はネリー・ブレンの内壁にバンザイに近い形で添えている。 そこはほんのりと暖かい。その感触を肌から感じ取り、ラキはホッと息をつく。 大丈夫。感覚は戻っている。 目も見える。耳も聞こえる。鼻も利くし、ブレンを感じることも出来る。大丈夫。まだ大丈夫だ。 そう何度も自分に思い聞かせた。そしてそこに意識を割かれ過ぎた。 風切り音を残して銃弾が飛来する。それはシャイニングガンダムの頭部に誂られたバルカンの弾。 意識を自分の内側に向けていたのに加えて、光を発するビームとは違い闇に紛れる実弾。視認のしにくさの分だけ反応が遅れた。 回避は間に合わない。だが、この程度の弾ならチャクラシールドで弾ける。 そう思い、チャクラシールドを張る瞬間、スッと右方向に回り込むうっすらと白くぼやけた帯が目を掠めた。 しまったっ! チャクラシールドが展開する。七色に揺れ、輝くチャクラの波に視界が遮られる。透明度の高いチャクラ光ではあるが、その輝度は高い。そして、今は夜。目標を見失う。 バルカンを弾き終わり視界が開けたとき、それは頭上に回りこんでいた。 右方向に注意を払っていたラキは完全に意表を衝かれた形となる。上方から勢い良く突っ込んできたギンガナムに対して、ブレンバーで受けるのが精一杯の反応だった。 だが、真正面から受け止めすぎた。上方からの押しつぶすような巨大な圧力。受け流せない。弾き、飛び退くにしても大地が邪魔になる。 「ブレン、耐えてくれ」 耐える。それが唯一残された選択肢。 足場の舗装道路が砕け、アスファルトの破片が舞い上がる。嫌な音を立ててブレンバーの刀身に皹が走る。 そして、次の瞬間――圧力は消え去った。一条の閃光が眼前を掠め飛び、その対応に追われたギンガナムの機体の姿が遠くなる。 クルツか。そう思った耳に飛び込んできたのは、まったく聞き覚えのない声だった。 「ラキ、これからあんたを援護する」 「お前……は?」 思わずキョトンと呆けたような呆気に取られたような顔になって、ラキは呟いた。突然、モニターの隅に赤毛の少女の顔が映し出されたのだ。 「アイビス=ダグラス。ラキ……あんたを探してた」 「アイ……ビス?」 「うん。あんたに伝えなきゃならないことがある。ジョシュアは……」 「知っている。ジョシュアはお前を守って死んでいった……」 アイビスの言を遮って、ジョシュアの死を口にする。その言葉にモニター越しの顔は俯いて押し黙った。 アイビス=ダグラス、そう名乗る少女の顔を見、ラキは話しかける。 「アイビス、私もお前を探していた。今会えてよかった。そう思える」 「えっ!?」 その声にパッと伏せていたアイビスの顔が上がった。戸惑い表情がそこには浮かんでいる。 微笑みを返す。意図した笑みではなかった。自然と口元が綻んだのだ。 『今』会えてよかった。本当にそう思える。 今ならまだいつもの私のままでいられる。でも二時間後三時間後は分からない。 次の放送を迎えたとき、いつもの自分でいられるという保証はどこにもなかった。 瞼を閉じ、ブレンの内壁に触れる両の手に神経を集中させる。 ほんのりと暖かい。気持ちを落ち着かせ、心を穏やかにさせる暖かさだ。 大丈夫。今の私はいつもの私だ。 「ラキ」 呼ばれて、もう一度アイビスに視線を戻した。そこには戸惑いの色はもうない。 あるのは一つの決意だけ、それが言葉となって飛んで来る。 「ジョシュアの弔い合戦だ。あいつを、ギンガナムを倒すよ!」 あいつにジョシュアは殺されたのか、と思った次の瞬間、ジョシュアはそれを望むのだろうか、とふと疑問が頭をもたげた。 あの時、ジョシュアはギンガナムの名を出すことはしなかったのだ。 「二人で楽しくやってるところ悪いがな。そろそろ奴さん仕掛けてきそうだぜ」 どちらにしても戦わないわけにはいかないだろう。二体のブレンはともかく、クルツのラーズアングリフは損傷が大きそうだ。逃げ切れるとはとても思えない。 思いなおし、ラキはギンガナムを睨みつける。 それにジョシュアがどう思おうと、仇は仇なのだ。ジョシュアを殺した者が生きている。それはやはり納得がいかない。許せないのだ。逃げるという選択肢は今はない。 「ああ、ジョシュアの仇討ちだ!!」 →Shape of my heart ―人が命懸けるモノ―(3)
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統夜の震えが、イェッツト・ヴァイサーガに伝導する。 ひたすら、目的へ向けて一直線に邁進していた統夜ですら、無意識に後退してしまうほどの存在感。 正面に立っているだけで、強風で吹き飛ばされる錯覚すら覚える。 これが、この殺し合いを開いた元凶の全力。 平行世界を歪め、世界の新生を企んだ、因果律という神の遣わした歪んだ大天使。 シュテルン・ノイ・レジセイアが存在するだけで放たれる生命波動は、明確な意思と力を感じるほどだった。 『我の力を宿した人間よ……もう一度問おう。我とともに歩むつもりはないか?』 「誰が……ッ!」 誰がそんな誘いの乗るものか、と言おうとするが、かみ合わぬ奥歯が、乾ききった口内が、それを許さない。 これが、おそらく最後通牒。これを断れば、まさに次元が違う存在と剣を交えることになる。 いや、そもそも剣を交えると、戦闘と呼べるだけのものになるのか。ただ、一方的な蹂躙だけで終わるのではないか。 「お、俺は……」 『答えは……?』 「俺は、俺は……おおおおおおおあああああああああッ!!」 高層ビルから飛び降りるのはおそらくこんな気持ちなのだろう。 統夜は、冷静に考えることをやめた。考えれば、考えるほど動けなくなる。 なら、一歩を踏み出すだけだ。目をつぶり、最愛の人、テニアを強く意識する。 そして、そのまま斬艦刀を振り上げ、ノイ・レジセイアに切りかかっていく。 限界まで引き絞られ、震えていた弦がはじけ弓が飛ぶように、イェッツト・ヴァイサーガが空間を駆ける。 これまで以上の加速を持って、ノイ・レジセイアを切り伏せんと。 あれだけの巨体で、しかも地面から生えていることから、到底回避などできようはずがない。 200m強まで巨大化した斬艦刀も、1000mを超えるノイ・レジセイアに比べればひどく矮小だ。 ノイ・レジセイアが、爪が並んだ手をこちらにかざす。すると、そこに光が集まり、巨大な光球が形成される。 背中が泡立つ感覚に従い、イェッツト・ヴァイサーガが進路を変えて後ろに下がる。 鋭角的な軌跡で動くことのできるイェッツト・ヴァイサーガだからできる技だ。 イェッツト・ヴァイサーガだから、助かった。 次の瞬間、本来イェッツト・ヴァイサーガが飛び込むはずだった空間が、食われた。 先程の戦闘では、足先程の空間をえぐるだけだったが、今度は違う。 前方数百mほどの範囲が食われ、消失した空間が黒く塗り潰された。 「――引っ張られる!?」 突然抹消させられた空間は、何も存在しない状態になる。すなわち、真空。 消失した空間に大気が流れ込むことで、イェッツト・ヴァイサーガの身体が前方に引き寄せられる。 それでも姿勢を立て直そうと嵐の中でイェッツト・ヴァイサーガがもがく。 斬艦刀が大きいままでは、風にあおられるだけだ。いったん、素の日本刀サイズまで戻さなくてはならない。 だが、そんなことをしている隙をノイ・レジセイアがくれるはずがなかった。 ノイ・レジセイア本体が存在する周囲の肉壁が盛り上がり、金属を引き延ばした棒のようなものが現れる。 一本二本ではない。十本二十本でもない。数百ですら足りない。その数――数千以上。 びっしりと針鼠の刺のごとく、乱立するそれが―― 一斉に光を放つ。 斬艦刀をそのまま盾にする。しかし、跳ね返せた時とは数が違う。圧力が違う。 なすすべなく、イェッツト・ヴァイサーガは吹き飛ばされ、地面にたたきつけられた。 一度目のバウンドで、素早く受け身を取ったことですぐさまイェッツト・ヴァイサーガが立ち上がる。 だが、統夜の視界に映るのは、ノイ・レジセイア本体ではなく、地面から沸き立つ異形の軍勢だった。 一種は、白。骨だけを固めて作った獰猛な獣。アインスト・クノッヘン。 一種は、緑。植物をより合わせ束ねた砲撃手。アインスト・グリード。 一種は、紫。からっぽの鎧を繋いで作る闘士。アインスト・ゲミュート。 失われた力を取り戻したノイ・レジセイアに、眷属を精製することなどたやすいこと。 無言のまま進む大軍勢。イェッツト・ヴァイサーガの振るう斬艦刀が、まとめて二十体以上を吹き飛ばす。 上半身か下半身を失い砕け散った軍勢は、地面に溶けてノイ・レジセイアに還元されていく。 そして、その後ろからはまたも無数の下位アインスト。 「きりがない……!」 いくらイェッツト・ヴァイサーガが一騎当千の実力とはいえ、万の軍勢を抑える力はない。 仲間の死骸を踏み越え、ひたすらに前進し殺到する下位アインスト達。 どうにか状況の変わるきっかけを探す統夜だったが、それは意外なところから訪れた。 きっかけをくれたのは、他でもないノイ・レジセイア自身。 ノイ・レジセイアの砲撃が、統夜に降り注いだのだ。 もちろん、下位アインストの僅かな隙を縫っての砲撃などではない。 下位アインストごとまとめて吹き飛ばす、一切の慈悲なき破壊の光がイェッツト・ヴァイサーガを焼く。 全身の神経に、マグマでも流し込まれたような痛みに、イェッツト・ヴァイサーガが地面を転がる。 さらに降り注ぐ砲撃を、自分の上に斬艦刀を重ねることでどうにか回避する。 砲撃の圧力で肉の地面に機体が埋まっていくなか、砲撃の途切れる瞬間を探すが、そんなものは見つからない。 当然だ。数千もあるなら、適当に撃ちまくるだけでも、常に砲撃が行われる。 だが、その砲撃がぴたりと突然やんだ。 なにが起こったのかを知るより早く統夜はイェッツト・ヴァイサーガの身を起こす。 ノイ・レジセイアの本体の前に、何かいる。 統夜が目を細めると、イェッツト・ヴァイサーガもフィードバックでカメラの倍率を上げた。 ずいぶん、小さい。イェッツト・ヴァイサーガの五分の一以下だ。 「あれは……あいつの!?」 確かに、自分をガウルンの同類呼ばわりした女の機体だった。 右手が欠けた小型機。僅かな生命波動を感じることから、生体マシンか。 瞬間移動を使うことで砲撃の死角に入り、何処かに向かっている。 向かっている先を視線で追うと、そこにいたのはあの以前の面影のないボロボロのマシン。 合流するつもりというのは、すぐさま理解した。理解したからこそ――統夜は、ノイ・レジセイアの本体に突っ込んだ。 ノイ・レジセイアはすぐさまこちらに反応し、砲撃を一部こちらに回した。 だが、一部なら、そしてすでに準備完了した今なら問題ない。 思い切り振りかぶったのち、フルスイングされた斬艦刀が光を跳ね返し、逆に砲台を破壊していく。 「そっちは……!」 「俺のことはいいから、早く行け!」 統夜に気付き、驚いた声を上げる小型機に声を飛ばす。 こっちのことにかまっている暇があったら、速く合流してほしい。 統夜もまた、あのロジャーとアキトのやりとりを見ている。ロジャーが、何かをあの二人に託したことを。 それが、何か分からない。けれど、それらが何かの切り札になることを願う。 一人では、勝てない。 弾よけでも、連撃のための間繋ぎでも、なんでもいい。 力を合わせなければならない。皆殺しにするのは分かってる。 だが、一人では戦えない。だから、統夜は敢えてアイビスを助けたのだ。 『愚かな……我を殺し、人を残すか……因果の使徒たる力を持つ者が……』 「悪いけど、あんたは俺一人じゃ倒せそうにない。俺は、誰とだって必要なら手を組むさ」 仮にそれが、ユーゼスやガウルン、地獄の悪魔でも知らない誰かでもいい。 そうやって、統夜は生き残ってきたのだから。 悪魔の腸の中に突入したブレンが飛ぶ。 まっすぐ、目指すべき場所であるカミーユのところへ。 背後をちらりとアイビスは振り返る。蒼い騎士が、一人あの姿を変えたノイ・レジセイアへ立ち向かっている。 相手になっているとも言い難い。必死に、倒れないようにするのが限界だった。 しかし、おかげでアイビスに砲撃が来ることはない。 本当にアイビスの言葉が伝わって協力してくれるようになったのか、それとも別の理由があるのかは分からない。 だが、ああやってあの騎士が食いとめてくれるおかげで、アイビスはカミーユのもとへ急行できる。 「斬艦・光刃閃! でやああああああああ!!」 200m近い巨大な刃が、目にもとまらぬ速度で振り回される。 そのたびに、わらわらと地面から現れる奇怪な生き物を吹き飛ばしている。 心の中で、アイビスは頭を下げた。今言ったところで、蒼い騎士の集中を乱すだけだ。 だから、アイビスはその代わりに蒼い騎士の期待にこたえるためにカミーユへ急いだ。 「カミーユ!」 「う……あ……」 さっきよりも酷いサイバスターの姿。 その傷は、アイビスがここに来るまで、カミーユが必死戦っていたことをありありと物語っていた。 カミーユの衰弱もさらに進行しているのは、医者でもない素人のアイビスの目にも見て取れる。 戦えるコンディションとは、とても言えそうにない。 「あの人の……遺したものを……ッ!」 どう声をかけるべきなのかとアイビスが戸惑っていると、逆にカミーユが口を開く。 あまりにも弱弱しく、息絶え絶えの様子でありながら、カミーユの声には、芯があった。 サイバスターの腕が、もう白い装甲板など全て剥げしまった腕が、ブレンへ伸ばされる。 カミーユも、諦めていない。まだ、絶望なんかしちゃいない。 アイビスはそう悟ると、すぐにギアコマンダーとJジュエルをサイバスターの手に握らせた。 「これが……あの人の……」 サイバスターの手を中心に、光が満ちる。 光が収まった時、そこにいたのは、紫の蛇と緑の猪。ロジャーが契約したデータウェポン。 いや、それだけではない。赤の竜も。燈の牛も。白の獅子も。蒼の一角獣も。 ユーゼスの操っていたAI1が一度は爆散したことによって解放されたデータウェポンもまた、 ギアコマンダーが全て一か所に集まったことで、再び姿を現したのだ。 七匹目の不死鳥はなくとも、いまだ星を守る聖獣たちの大部分はなお健在だった。 六匹とも、暴れるわけでもなく、どこかに行くわけでもなく、ただじっとサイバスターを見つめていた。 静かに、カミーユを見定めるように。 「力を貸してくれ……! 俺は、あの人ほど自分に自信が持てるわけじゃない、何かを創れるわけじゃない……! けど、あの人が、クワトロ大尉が、中尉が、ベガさんが、アムロ大尉が……みんながこうしてくれって言ってるんだ。 俺は駄目かもしれない。だけど、彼らを認めてくれるのなら、俺に……!」 データウェポンは、沈黙を守っている。 背後からは、蒼い騎士が処理しきれなかったアインスト軍団が進軍しつつある。 アイビスは、そちらに対処するためにカミーユに背を向ける。 ソードエクステンションから放たれるチャクラ光が、空から飛びかからんとしたクノッヘンを叩き落とす。 だが、正面に並んだ無数のグリードが口か茎の切り口か分からぬ部分から放たれた光がブレンを襲った。 「お願い! ブレン!」 後ろにカミーユがいる以上、下手に回避すればそちらが被弾してしまう。 展開したチャクラシールドが、ハイストレーネの雨を、どうにかはじき返す。しかし、チャクラシールドはきしんでいる。 ブレンが得意とする、機動力とバイタルジャンプによる撹乱戦法が使えないのだ。 足を止めての戦闘は、最悪ともいえた。 それでも、アイビスはその場から動くことはない。 方法は分からずとも、もうすぐカミーユは立ちあがる。そうカミーユを――「信頼」しているから。 ゲミュートの上半身と下半身がバックリと割れ、中から紅球が姿を現した。 明滅する紅球が同じ大きさの赤い光球を放つと、それはチャクラシールドに吸着し、その光を吸い取っていく。 薄れていくチャクラシールド。 「くっ!」 シールドに固執すると、逆に危ない。 そう判断したアイビスは、さらに赤い光球を放とうとするゲミュートの紅球を、ソードエクステンションで撃ち抜いた。 たちまち、崩れていくゲミュート。どうやら、あの赤い部分が核だったらしい。 だが、弱点を見つけたに安堵している暇はない。なぜなら、次々とブレンへアインスト軍団は迫ってきているのだから――! 降り注ぐ角、光球、ビーム砲。 数に任せたごり押しの攻撃。バイタルジャンプできない以上、再びフォトンシールドを張るしかない。 だが、先ほどとは規模が違う大砲撃はあっさりとフォトンシールドを突き破ろうとしていた。 「頑張って、ブレン! ブレンなら、きっと私たちならできるから!」 『一方的に何かをしてもらったと思ってる。自分は何もしてないのにってな。つまり対等だと思えないんだ。仲間なのにな。 理由もないのに世話を焼かれ続けるのってきまりが悪いだろ? それと同じだ。相手は気にしてないのかもしれないが、お前はそれを気にしてる。 だったら見返してやれるぐらいしっかりした人間になればいいのさ。そのくらい自分に自信がついたら、その後ろめたさは消えるんじゃねえかな』 意味は、ないのかもしれない。けれど、アイビスはブレンへ強く思念を送る。 アイビスの脳裏に響くのは、一人の男の声。クルツ・ウェーバーの言葉。このままじゃ終われない。 まだ、自分はカミーユにも―― 『私の命も背負っていけ、アイビス……』 ――シャアにも受け取った分を返していない。いや、自分を守ってくれた人々の多くに、何も返していない。 なにも、この世界に来てからだけじゃない。ツグミにもだ。 だから。 ――『アイビス、死ぬことだけは許さん。後は好きにしろ。行け、ブレン!』 思いを託してくれた仲間を信じる――皆が信じてくれた自分を信じる! 巨大な津波すら押し返すほどの巨大なチャクラシールドが、地面の肉壁すら巻き上げ、アインストを飲み込んでいく。 波紋のように広がる光の津波は、大多数のアインストを粉砕した。 だが、アインストはあまりにも多すぎた。あれだけの力を放ってなお、砕ききれぬほどの数のアインスト達。 生き残った者たちが、力を振り絞り限界近いブレンを食い殺さんと骨と金属を打ち鳴らし、接近してくる。 ブレンに動くように言うが、さしものブレンも疲労で咄嗟に動けない。 もう、爪がブレンに触れる。 いや、触れることはない。アインストたちが、横やりから現れた影になぎ倒された。 「えっ……!?」 アインストを粉砕し、ブレンの前に立つのは、蒼の一角獣ユニコーンドリルと、白の獅子レオサークル。 カミーユの前にいたはずの二匹は、今はアイビスを見つめている。 「力を、貸してくれるの……?」 アイビスの声に、二匹は一度ノイ・レジセイアを見た後、静かに頷いた。 ブレンの側に二匹の聖獣が寄り添ったかと思うと、その姿は溶け――ブレンの一部となっていた。 失われた右腕には、ユニコーンドリルが。背中に円形のブースターとしてレオサークルが。 凰牙とは違うかたちでの、半生半機の生体マシンであるブレンと電子の聖獣の融合。 アイビスの仲間を信じる「信頼」と、どんな苦境でも諦めない「勇気」が、かたちとなって力に変わる。 「すごい……これならいける!」 元々、大容量のエネルギー施設を好むデータウェポンたちは、それ自体が大きな力を持っている。 そのうちの二体と同時に融合、シンクロしたブレンのエネルギーがみるみるうちに回復していく。 無限のエネルギーには程遠くとも、少なくとも再びブレンに活力を満たすには十分すぎるエネルギー量だ。 また新たなアインストが生まれ、ブレンを倒さんとする。 しかし、新生ブレンから放たれるソードエクステンションは、一撃で雑魚アインストを粉砕した。 特機にはまだ及びつかない威力だが、それでも今までを考えれば比較にならない。 「行こう、ブレン……!」 「――ああ、こっちもだ」 ブレンの背後から放たれる炎の渦が、さらにアインストを燃やしつくす。 その声に、アイビスは振り向いた。そこにいたのは、ほとんど元通りになったサイバスターの姿。 「カミーユ、その姿……」 「あのデータウェポンたちが、サイバスターと契約してくれたんだ。 俺との契約は駄目でも……このサイバスターに残ってた思いに」 カミーユは、どこか遠くを見つめながら静かに呟いた。 「ベガさんは、分からず屋の俺みたいな人間にも優しい人だった」 ドラゴンフレアが望む契約条件――慈愛。 「ロジャーさんは、どんな時でも、自分を見失わなかった。いつも自信に満ち溢れていた」 バイパーウィップの契約条件――自信。 「ブンドルは、誰よりも未来を見通してた。俺たちが、目先のことで熱くなるのを抑えて、最期まで導いてくれようとしていた」 ブルホーンの契約条件――知恵 「アムロ大尉は、壊すよりも、何かを作り出そうと、何かを積み上げようとしていた。それを信じていた」 ガトリングボアの契約条件――創造。 「皆、俺とは違って大人として最後までやったんだ。あの人たちは、違ったんだ」 サイバスターの修復は、体内に取り込まれたデータウェポンの作用と言うことなのか。 それとも、装甲すら再生成させる精霊憑依の力の片鱗なのか。 アイビスには、どちらかもわからない。ただ、今のカミーユはアイビスの目にも酷く危うく見えた。 「終わらせるさ……あの人たちはみんな死んでいい人じゃなかった。それを、あいつに分からせてやるんだよ」 サイバスターが、空へ再び舞い上がる。続いて、ブレンもまた肉の空へ。 蒼い騎士が、砲撃にさらされ、こちらに吹き飛ばされて来る。しかし、空中でどうにか減速すると、姿勢を立て直した。 「……間にあったみたいだな」 「助けてくれてありがとう。けど、どうして……」 「別に。俺一人じゃ倒せそうにないから、あんたらにも手伝って欲しかっただけだ。 ……言っただろ、俺はガウルンとは違う。戦えれば何でもいいわけじゃない。あいつを倒さないといけないんだ」 ガウルンとは違うという部分にアクセントを置いた声。 どれだけガウルンが嫌いなんだろうとアイビスもちょっと思ったが、敢えて口には出さないでおく。 「あいつを倒して、あいつの力を奪わないといけないんだよ。協力してくれたら、こっちだって融通くらいするさ。 ここから脱出する際の、世界間通路は開いてやるよ」 「あれの力を奪う……? どれでどうするつもりなんだ。まさか、今度はお前が神を気取るつもりなのか?」 カミーユの声が怒気混じりになる。 しかし、蒼い騎士は平然と答えた。 「神、か……興味ない。俺は、もう一度会いたい人がいるだけだ。会うためには、あいつの力がいる。それだけだ。 神様みたいな力があっても……俺じゃ力を神様として使えるような頭じゃない。あいつが言うには考え方は、人間らしいから」 そうやって、ノイ・レジセイアを指さした。 カミーユは、まだ納得いっていない様子だったが、一応は飲み込めたのだろう。 「そういうことなら、いいさ。会いたい人は、俺にだって大勢いるんだ。……名前は?」 「紫雲 統夜だよ。そっちは?」 「私は、アイビス」 「……カミーユだよ」 「それじゃ、アイビス、カミーユ。今から、少しだけど一応仲間だ」 サイバスターが、ディスカッターを構える。 ブレンが、ソードエクステンションを構える。 イェッツト・ヴァイサーガが斬艦刀を構える。 『……七つ目の、無限の聖獣ならいざ知らず……それ以外の六つと……不完全な生命機が一つ…… それでは我との力の差を埋めることなど……できぬ……』 しかし、その三機を前にしてもノイ・レジセイアの声色は変わらない。 全く無意味だと、思念一つぶらさずそう伝えてくる。 「埋められるか、埋められないかはお前が決めることじゃあない」 「それに、できるできないで考えるなら、ここまで来てないよ」 「やりたいことがあったから、ここまで来たんだ」 それに対する、三人の想いは、奇しくも三人とも同じ。 『人間とは……つくづく度し難い……失せよ……!』 ノイ・レジセイアの本体周囲から、またも砲門が生まれ、三機を射抜かんと向けられる。 先程と同じ、当たったらその場で追撃をかけられアウト。回避を取るだけでは、執拗な砲撃でじり貧になる。 それを知っていたアイビスは、側にいた二機の腕をなにも言わず強引に掴んだ。 「なにするんだよ!?」 「いいから黙ってて! このまま懐に飛び込むから! ブレン、お願い!」 砲門が進路変更するまで、時間がかかる。それだけではない。相手の懐に入れば、自分を傷つけるのは避けるため砲撃が抑えられる。 統夜に助けられるまでにアイビスが発見したことだ。ブレンの身体が虹色の輪をその場に遺し、三機まとめて跳躍する。 転移した先では、ノイ・レジセイアの巨体がもうすぐ目の前にあった。 「っと!?」 「このままいくよ!」 ブレンの能力を把握していなかった統夜以外の二人が、転移と同時にノイ・レジセイアへ向けて飛ぶ。 サイバスターがノイ・レジセイアの懐に潜り込む。ドラゴンフレアの能力によって焔を纏った剣が思い切りを叩き付けられた。 並みのモビルスーツなら、触れるよりも早く溶けだしてしまうほどの聖獣の熱量を帯びた剣が、爆音を放つ。 だが敵は、モビルスーツなどとは比肩にできぬ世界の遣わした醜悪な天使。 桁外れの超存在の前には、今のサイバスターの一撃すらかすり傷にしかならない。 巨体の肩口あたりを、確かに刀身以上の範囲切り裂いている。だが、あまりにも敵が大きい。 20m近い斬撃の傷跡も、1kmを超える上半身の前ではほぼ無意味。 『理解できん……古い人間すべてにどれだけの価値がある……?』 カミーユも、アイビスも一発で結着を付けられるとは最初から思っていない。 大きいがゆえに鈍重で、死角の多いノイ・レジセイアへ、二発目三発目とさらに斬撃を放つ。 アイビスもソードエクステンションで切り裂いているが、到底ダメージを与えられたとは思えない。 そうこうしている間に、ノイ・レジセイアもまた動き出す。 本体の、骨や鎧に似た部分と、肉に似た部分のつなぎ目から、緑色の触手があふれだした。 身体を這うように進む触手が、アイビスの乗るブレンとカミーユのサイバスターが攻撃する地点まであっという間に到達した。 「そんな……再生!?」 触手の津波から逃れるためノイ・レジセイアから二機が離れる。 すると、触手が傷口に潜り込み、欠損を埋め、元通りに戻してしまう。 ソードエクステンションでそれを食い止めようとするが、爆破したそばから再生する。 明らかに、再生速度のほうが早い。いや、それだけではない。 再生に必要のない、手のあいた触手たちはサイバスターたちを追ってきている。 その速さは――尋常ではない。 「――速い!?」 「ブレン、かわして!」 刺し殺すようにまっすぐ伸びた触手をどうにか回避する。二機の背後でさらに触手は曲がり、戻ってくる。 同時に、前からは新しい触手が挟み込むかたちで進んできていた。 輝線の残像を残しジグザグに折れ曲がる触手の群れは、絶えず爆竹の束がはじけるような音を立てている。 音を超えた速度の鞭の先が空気を叩く音だ。音速を超えた時に放たれる衝撃波。つまり、鞭の速度は音速をはるかに凌駕していることに他ならない。 どうにか、ターンカットといったRaM系の独特の飛び方とバイタルジャンプで、鞭をかわす。 いくらブレンでも、音速を超える鞭より早く動くことはできない。 サイバスターのほうはと言うと、全包囲に目が付いているような最小限の動きで回避し、さらに触手を切っていこうとしている。 だが、分が悪いのは明白だった。 触手に、追われ、ノイ・レジセイアとの距離が再びあこうとしている。 もうすぐ、砲撃が再開する距離になる。じりじり下がるしかないことに、アイビスは焦る心を抑えようとする。 ブレンの真横から、蒼色の疾風が吹き荒れた。 サイバスターとブレンに近づく触手の盾になるように現れたのは、統夜のイェッツト・ヴァイサーガ。 「まったく、このくらいの相手になんで苦戦しているんだ」 視界を埋め尽くすほどの巨大な触手の束が、前方で花が咲くように開いた。 一気にこちらを飲み込むつもりだとわかり、全員でバイタルジャンプするためと統夜に近づこうとして、 「―――九頭龍光刃閃・霞」 触手に、光の線が刻まれる。その数、合計九つ。 いや、大きな線が九つというだけで、さらに細い線はよく見れば無数に刻まれていた。 目の前の触手たちが、粉みじんに切り裂かれ、地面に落下していく。 イェッツト・ヴァイサーガが持つ剣をよく見れば、大きな芯となる部分以外に、細いワイヤーのようなものが大量に付いていた。 「まさか……それ全部で、切ったの?」 「別に大したことじゃないさ」 あっさり言ってのける統夜の技量に、アイビスはあきれるしかなかった。 もし、さっきのやりとりの時、本気で殺しに来ていたら――おそらく自分は一秒と持たなかったんじゃないか。 そう思わざるを得ないが、仲間になるとなればこれほど頼もしいものはない。 もっとも、実は統夜のこの力はデュミナスの力を奪ってからのものなので、実はアイビスの考えは見当違いなのだが。 『何故足掻く……古き者たち……お前たち自身には……価値などないというのに……』 触手を統夜が払うことによって、再び進軍のための通路があく。 サイバスターとブレンが、再び突っ込んでいく。さらに数を増す触手。それも、やはり統夜の前には文字通り『一瞬』で切り刻まれる。 「そんなことを決める権利がお前にあるのかよ!」 サイバスターの羽に似た三対六個のスラスターが、スカイブルーの粒子を放つ。 サイバスターは純白の翼によりさらなる加速を付け、ノイ・レジセイア目掛けての直線軌道による突撃(ラッシュ)。 そのまま勢いを活かし、ディスカッターを渾身の力で振り下ろそうとする。 ノイ・レジセイアはそれに対応すべく、爪の生えた異常に肥大化した右腕をサイバスターの方に突き出した。 「あれは……ッ! よけろ!」 統夜のそんな制止の声も振り切り、サイバスターは突っ込んでいく。 足を止めたブレンとイェッツト・ヴァイサーガの前に現れるのは、黒穴。空間ごと食いちぎられた虚無の空間だ。 空気が再び流れ込み、暴風を生む。 「カミーユ……!?」 「あの馬鹿……食われる地点に自分から……!」 思わず飛び出そうとするブレンを、イェッツト・ヴァイサーガの腕が押しとどめた。 「離して! カミーユが、このままじゃカミーユが……」 「馬鹿言うな!」 空間ごと食われたら、物質の強度など意味を持たない。即座に抹消される。 そう分かっていても、アイビスは走り出そうとする。仲間の最期がこんな終わりだと、信じたくなかったから。 腕を振り払い、飛び出すアイビス。 しかし、後ろにいるイェッツト・ヴァイサーガから聞こえてくる声はアイビスの予想していたものとは逆だった。 「生命波動をはっきり感じるんだ! 死ぬどころか、逆にさっきより輝いてる! 巻き込まれてないんだよ!」 「え……?」 「だから焦るなよ。焦ったら、勝てるものも勝てなくなるってガウ……いや、よく言うだろ」 そこまで、統夜が言った時。 黒い暴風の渦から、深紅の何かが現れ、ノイ・レジセイアへ矢のように向かって行く。 その姿は人型ではなく、猛禽類の形をしている。 「あれ……そうか、サイバード!」 突っ込んださなか、カミーユはおそらく変形し、さらに加速したのだ。 あのままの速度で突っ込んでくると踏んで設置された空間攻撃を、さらなる速度で炸裂するまえに突っ切る。 とんでもない無茶だと思うが、カミーユはそれを成功させたのだ。 『この力……望んでいない……!』 爆発に近い風の流れを生み出して、深紅の火球を核とする不死鳥が大空を羽ばたいた。 肉を焦がし燃やし溶かし、ノイ・レジセイアの身体へ到達したアカシック・バスターがノイ・レジセイアの巨体にめり込んでいく。 爪をかけて弾き飛ばそうと動いたノイ・レジセイアの手が、近づけただけで熱によって発火する。 紅蓮の塊は、ノイ・レジセイアですら触れることが困難なほどの火力だ。 「俺たちも行くぞ」 「うん……!」 イェッツト・ヴァイサーガとブレンが、サイバスターの後を追い、ノイ・レジセイアへ。 頭上スレスレを切り裂いてゆく敵の触手など気にも留めず、サイバスターの後を追う。 サイバスターは、ノイ・レジセイアの身体に大穴をあけ、さらにその中へ潜り込もうとしていた。 『聖獣の力……それは人の持つ完全なる欠片とは言い難い……』 奇怪な声が、場に響く。人の言葉に強引に返還するならエアヴァントゥルングといったところか。 緋色と橙色の絶叫が、サイバスターが掘り進む傷口から噴出した。 今までサイバスターに与えられた熱をそのままそっくりお返ししたとしか思えない炎の光が、サイバスターを弾き飛ばした。 アカシック・バスターの炎の領域によりサイバスターに怪我はなさそうだが、その纏った力場は剥がれてしまった。 『人間に価値はない……人間と人間が結び付いたときにおこる力……事象にのみ価値がある…… それが……何故……分からない……!?』 「命は、命自身が力なんだ。命は、この宇宙を支えているものなんだ! それを価値がないなんて……分かるものかよ!」 ガトリングボアの力がサイバスターの手から放たれたが、 それはノイ・レジセイアの前に発生した空間のねじれにあっさりかき消された。 『ならば、人間と言う存在に……価値があると……?』 「当たり前だ!」 『ならば……その価値を奪う資格が何故お前にある……?』 触手が、サイバスターとノイ・レジセイアの間に壁を作る。 その間に、アイビスと統夜は触手の影からノイ・レジセイアへさらに切りかかった。 ブレンのソードエクステンションはともかく、 200m級まで肥大化したイェッツト・ヴァイサーガの斬艦刀は、ノイ・レジセイアの肩に深く食い込んだ。 しかし、ノイ・レジセイアは平然としたまま、その巨眼をアイビスと統夜に向けた。 『お前たちは……命に価値があると言いながら……それを奪う……理解できない…… 価値があるというのなら……何故、それを奪える……価値あるものを奪う権利が……お前たちには存在するのか?』 さらに、ノイ・レジセイアはカミーユへ目をやると、 『お前が奪った命は……価値があったのか? 存在しなかったから奪ったのか……?』 「俺が奪った命……」 『あの人間は、ただ帰ろうとしていた。あの世界における法則に従い他者の生命を奪おうとした…… あの人間の命は……なんだった?』 「あの、ジオン兵……」 カミーユの動きが、止まる。 どう答えればいいのか、懊悩しているのはアイビスにもすぐに分かった。 ノイ・レジセイアもまた、カミーユがなんと答えるのか攻撃を仕掛けることもせずただ待っている。 アイビスには、ノイ・レジセイアとカミーユに視線を行ったり来たりさせることしかできない。 「くだらない……!」 右から左。上から下。斜めに入る袈裟切り。下から振るう突き上げ。怒涛の連撃が、次々とノイ・レジセイアの巨体に叩き込まれる。 大空洞内に鳴り響く轟音は、イェッツト・ヴァイサーガの剣とノイ・レジセイアの皮膚との衝突音。 一撃打ち込まれる度にノイ・レジセイアの身体に大きな切り傷が生じてゆく。 それでも、ノイ・レジセイアは一度イェッツト・ヴァイサーガを見ただけで、何をしようともしない。 「お前が殺し合わせておいて、なにが価値だ! どんな時でもそうするしかなかった! どんな時だってそうだ! 俺が決められる部分なんてたいしてなかった。それでも、選んできたんだ!」 イェッツト・ヴァイサーガが突然吹き飛ばされた。 傷口から吹きあがる力を持つ声が、イェッツト・ヴァイサーガを遠く離れた地面に叩きつける。 『否……箱庭は、世界の縮図……世界で、人は殺し合う……宇宙を乱す……それは我の関することではない…… 選択は……無数……事実……最後まで我に抵抗しつづけた者も……人間と言うものは……他者と触れた時……拒絶し……否定する……』 さらに、その異形の腕でイェッツト・ヴァイサーガを指し、 『お前は……選んだのだ……闘争に塗れた道を……。それは、お前という本質が……闘争を望み…… 静寂を破壊することに愉悦を覚えるものたちの一人であるという……証明に他ならない……』 「俺が……ガウルンと同類だって言いたいのかよ……」 イェッツト・ヴァイサーガが立ち上がろうとするが、アインスト軍団がそれを阻止し、さらに踏みつけにしようとしていた。 『拒絶、否定、闘争こそ……人の邂逅……』 「違う! そんなことない! 人は、皆で手を取り合って生きていけるんだ!」 まだ知らぬ宇宙の隣人との邂逅。 それが、温かいものであるとアイビスは信じているからこそ、アストロノーツの道を選んだのだ。 他人と触れた時、起こることは否定や拒絶ではない。 事実、この世界で出会った異世界の多くの人々は、打ち解けることが出来た。 殺し合いに乗った者もいたが、アイビスから見ればそっちのほうが少数だ。 今度は、アイビスを見て、ノイ・レジセイアは告げる。 『そう……時に、そういった矛盾が起こる……そして、それは我すら超える、大きな力のうねりとすらなる……』 「それが、人が手を取り合うってことなんだよ!」 アイビスの攻撃に対しても、ノイ・レジセイアは何もしない。 傷口すら再生させず、ノイ・レジセイアはアイビスを見ていた。 『矛盾した……宇宙を乱す生命……人間……それが結ばれたときに現れる力には……価値がある。 しかし……人間自身には……価値などない……故に―――――』 光線が伸びる。薄く引き延ばされ、空に舞い上がりながら、折れ曲がり無数に分かれていく。 別れたものがさらに伸び、再び折れ曲がり、多種多様なものを作り上げる。 一つは、円。そのうち二つは、三角形。無数のねじくれた文字のようなもの。 さらに、よくわからない多角形がいくつもいくつもいくつも組みあがっていき、 『―――要素を抽出し、次なる世界の礎とする』 魔法陣になった。 巨大すぎる魔法陣が、球形のため湾曲している天井に張り付く。 それは、高速で回転し、深紅色に輝き、大空洞を光で満たし、なお回転を加速させ―― ―――次の瞬間、大空洞に光があふれた。 →ネクスト・バトルロワイアル(6)
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YF-19 機体名 YF-19 全長 18.47m(ファイター時) 主武装 マウラーREB-30G対空レーザー機銃×1マウラーREB-23半固定レーザー機銃×2マイクロミサイル×24中距離ミサイル×6ハワードGU-15ガンポッド×1:バトロイド時のメイン武装。ミサイルを打ち落としたりと、防御にも使える。 特殊装備 フォールドブースター 片道だけだが,ワープを可能とするブースター ピンポイントバリアシステム 防御力の向上、格闘戦の際の機体保護。ご存知ピンポイントバリアパンチなど、使う機会は多い。 ファストパック 肩の追加装甲と脚部のミサイルランチャー。 移動可能な地形 空 F,G 陸 B,G 海 ×地 ×F=ファイター、G=ガウォーク、B=バトロイド 備考 エンジン 新星 P W ロイス FF2200熱核バーストタービン×2推力 56500kg×2最高速度 M5.1+(高度10000m) M21.0+(高度30000m) ※いずれもファイター時フォールドブースター、ファストパックを装備しています。